青森地方裁判所 昭和27年(行)7号 判決
原告 畑井岩蔵
被告 小湊町農業委員会・青森県農業委員会
一、主 文
被告小湊町農業委員会が昭和二十六年五月十日なした「同委員会の別紙目録記載の農地に対する昭和二十三年五月十七日附買収計画及び売渡計画」を取消す旨の決定は無効であることを確定する。
原告の被告青森県農業委員会に対する請求を却下する。
訴訟費用中原告と被告小湊町農業委員会との間に生じた部分は被告小湊町農業委員会の負担としその余は原告の負担とする。
二、事 実
原告訴訟代理人は、被告小湊町農業委員会が昭和二十六年五月十日なした同委員会の別紙目録記載の農地に対する昭和二十三年五月十七日附買収計画及び売渡計画を取消す旨の決定は無効であることを確定する、若し右取消決定が無効でないときはこれを取消す、被告青森県農業委員会が同年十二月十日なした右取消決定に対する承認は無効であることを確定する、若し右承認が無効でないときはこれを取消す、訴訟費用は被告等の負担とするとの判決を決め、その請求の原因として、
「(一)訴外川越すなはその所有の本件農地につき昭和二十三年四月二日被告小湊町農業委員会(当時小湊町農地委員会)に対し自作農創設特別措置法第三条第五項第七号による政府買収の申出をした。そこで同委員会は同法に則り昭和二十三年五月十七日右農地に対する買収計画とこれを原告に売渡す旨の売渡計画とをたて同月十八日その旨を公告し同日以降十日間その書類を一般の縦覧に供し被告青森県農業委員会(当時青森県農地委員会)は同年七月一日右計画をいずれも承認した。そして青森県知事は昭和二十三年八月二十日所有者川越すなに対し右買収計画に基ずく買収令書を交付し該農地を買収し同年十一月十一日原告に対し右売渡計画に基ずく売渡通知書を交付してこれを売渡した。
(二)しかるところ被告小湊町農業委員会(当時小湊町農地委員会)は昭和二十六年五月十日前記買収計画並びに売渡計画を取消し昭和二十七年一月三日原告及び川越すなに対しその旨を通知し被告青森県農業委員会は右通知にさきだち昭和二十六年十二月十日右取消決定を承認した。
(三)しかし右取消決定はその取消の目的たる本件買収売渡計画に基ずく青森県知事の買収令書売渡通知書交付後の処分であるから当然無効である。若し右主張が理由がないとしても右取消決定は事前に右各計画に対する青森県知事の農業委員会法第四十九条による確認を受けていないから当然無効である。仮りに叙上の瑕疵が無効原因に該らないとしても右は少くとも右取消決定の取消事由に該当する。
(四)また被告青森県農業委員会がなした小湊町農業委員会の取消処分に対する前記承認も右に述べたような瑕疵ある処分を承認したものであるから当然無効である。仮りに無効でないとしても取消さるべきものである。」と述べた(立証省略)。
被告等は原告の請求を棄却する訴訟費用は原告の負担とするとの判決を求め答弁として、
「原告主張(一)(二)の事実及び(三)の事実中小湊町農業委員会が本件取消処分をなすに当り本件買収売渡各計画に対する青森県知事の農業委員会法第四十九条による確認を受けていなかつたことはいずれもこれを認めるがその余の事実はすべて否認する。
農業委員会が自己のなした買収計画或は売渡計画を違法として取消す場合これに対し特に原告主張のような期間の制限はない。而して小湊町農業委員会(当時小湊町農地委員会)が本件買収売渡計画を取消したのは農業委員会法施行前の昭和二十六年五月十日であるから右取消につき同法第四十九条による青森県知事の事前確認を要しない。また青森県農業委員会の本件買収売渡計画取消決定に対する承認は法律上要求されているものではなく単なる慣行に従い上級庁としての意見を下級庁たる小湊町農業委員会に表明したまでのものであつて外部に対する意思表示ではなく行政内部の関係に過ぎないものであるから所謂行政処分ではない。従つてかかる承認を訴訟物として訴を提起することは許されない。」
と述べた(立証省略)。
三、理 由
原告主張(一)(二)の事実は当事者間に争がないから被告小湊町農業委員会の本件取消処分はその取消の対象となつた本件買収計画並びに売渡計画に基ずく本件農地の買収売渡手続完了後になされたものであることが明である。そこで考えるに農地の買収手続或はその売渡手続が完了した場合その基礎となつた買収計画或は売渡計画を処分庁である市町村農業委員会が自ら取消すことは、県農業委員会の承認によつて買収計画或は売渡計画の確定するのを待ちこれを容認し且つ基礎として終局的に当該農地を買収し或は売渡す上級行政庁たる県知事の処分と相矛盾しこれを一挙に覆すこととなるから許されないものと解するのが相当である。したがつて被告小湊町農業委員会の右取消処分は無効であるというのほかはない。
次いで原告は被告青森県農業委員会がなした被告小湊町農業委員会の本件取消処分に対する承認の無効確認乃至取消を求めるというのであるが右承認は下級庁の処分に対し上級庁としての見解を表明したまでのものに過ぎず権利義務に直接具体的な効果を及ぼすものではないからこれを対象としてその無効確認乃至取消訴訟を提起することは許されない。
よつて訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八十九条を適用し主文のとおり判決する。
(裁判官 工藤健作 中島誠二 野原文吉)
(目録省略)